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1秒での切り返し

  • infodekaban
  • 3月19日
  • 読了時間: 3分

石鯛コラム ”持ち竿スタイル” の続編として読んで頂きたい。

アサリのむき身を針に刺し、悪戦苦闘の末、ようやく石鯛がヒットした。


強烈な締め込みと同時に竿が海中へ突っこんで行く。


師は「軍隊の折れ式でやんない(やりなさい)。1秒で竿を右から左へ切り返さないといけんよ」と言う。


デカバンは掛けた瞬間になぎ倒されるほどの締め込みで、竿をためるだけでも精一杯なのに 「1秒で竿を切り返す?」 とんでもなく無茶苦茶なことを仰る。


即座に「私には無理です」と答えた。


師はにっこりと歯を見せて微笑んだ。


その微笑みはの意味は何なんだろうか…



その頃の私には、それを理解するには程遠い世界であった。


その後、理解できないまま十数年が経過した。


そんな折、大阪で師と話す機会が出来た。 私は師に会い、すぐさま「点の教えを線にするのに今日まで石鯛をやってきましたが、未だに1秒で切り返すことは私には無理です。私の現役もあとわずかです。師の課題はクリア出来ません、もう難しい話はしないで下さい」と伝えた。

それでも師はニッコリと笑う。 私の内心はおだやかでない。 私はこれまで数多くの石鯛、口白石鯛のデカバンをバラして来た。


石鯛の4~5kgまでは「釣る」、6kg以上は「獲る」と言う言い方が相応しい世界。


石鯛の6kg以上を「獲る」には、それ以下の石物(石鯛やイシガキダイ)を釣りまくった釣人にしか見えない世界。 デカバン8kg以上、本石で6kg以上になると敵城の本丸に陣取ってジッとしている、そのデカバンを本丸から誘い出し、獲る行程は、野生を生き抜いてきたデカバンと釣人と戦いである。


が、しかし敵城の本丸の仕組みは多種多様でそうそう見切れるものではない。


理由は当然だが磯によって磯根が全て違うと言うことが挙げられる。


サンゴ、岩、洞穴、タナ、海溝、ゴロタ石、海藻、その他幾重にも防護壁がある。 我々釣人には海の中や底は容易に推し量ることの出来ない領域にある。


道糸60号、80号を持ってしても一瞬の内に切られてしまう。


ならばと、オールステンレスワイヤー糸、時にはコーティングしたワイヤー糸、現在は磯ハンター60号、こうした秘術を持ってしても獲れん奴は獲れんかった。 それなのに師は何故無理を言うのか、と心の中で葛藤が始まる。


頭の中では走馬灯のように過去の情景が脳裏に浮かぶ。


レンガ、ブロックの引き抜き合わせや、クエ竿を持ち竿で自在にこなして来た。


また自在にドラックハンドルも操作して来た。


なのに「1秒での切り返し」は無理無理と自問自答。 しかしその後、3年が経ち、師の課題「1秒での切り返し」がようやく理解出来た。


思えばコロンブスの卵である。 師が、あの時微笑んだ意味がようやく理解が出来た。


また機会があれば、このブログでご紹介しようと思う。


 
 
 

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