ドラッグハンドルの必要性
- infodekaban
- 3月19日
- 読了時間: 4分
師は「大阪へ久しぶりに行くで食事でもせんね!」と言う。
私は嬉しいやら怖いやら、まるで恋人にでも逢うかのような気持ち。
師は察してか友人と一緒でも構わないと言うので、釣友の小田正文氏と藤原敏伸氏に 連絡を取り、大阪のリッツカールトンホテルで食事をする事になった。
そこでの一幕。 師は
「石鯛釣るのに1番は石鯛に餌を喰わす事。喰わして次は竿、リールの出番がある。 ピトンはいらない」と言う。
なるほどと、思ったが果たしてそんな簡単に実行出来るだろうか?
普段なら潮を読み、磯に上がり、まずは1番最初にピトンを打つ。
竿にリールセット、仕掛けから餌と移行、順番は多少前後してもセオリーが決まっている。 師が言うことに合点がいかないが・・・師は至極当然のように言い放つ。
私は合点がいかないのを笑ってごまかそうと、師の顔を見てニタニタしていた。
師はその私を見て「何を笑ってるんだ」と言わんばかりに私を睨む…
師と私には差があまりにも開きすぎて(天と地の差)とてもじゃないが理解が追いつかない。
時限が違いすぎる。
次に師は「魚掛けたらリールの道糸は出したらいけんよ」と言う。
私が「道糸が出て行ったらどうするんですか?」と聞くと、
師は「道糸が出んようにハンドルとドラックを木鎚でたたいて糸で止めないよ!! (止めなさい)」と言う。 師は「松ちゃんは力が強そうやけん宇治(宇治群島)の碁盤目のような海溝があって
そこに”デカイ奴”が居るんであんたそこで釣んない(釣りなさい)」と言う。
私は喜んで良いのやら悪いのやら…掛けたら切れる様なところで「獲れない」のを「獲る」 為の特訓が始まった。 師の場合は尻に座布団敷き、糸にスクーター結んでを走らせ、竿で力を溜める練習したとのこと
私はスクーターの代わりに犬を走らせ、溜める訓練をした。
師は「レンガ二枚重ねて、サオでポンポンと浮かせないよ!!(浮かせてみなさい)」と言う。
実に簡単に仰られる。
実際にやってみると、とんでもないことと気づく。
レンガ1枚は2kg。それが2個で都合4kgの重さのものをポンポンと浮かせるなんて…
慣れない時は竿が折れたり、リールのストップギアが飛んだりと、悪戦苦闘の連続である。
当然のように実施指導も無く、全て「点」での話である。 4Kg程のオモリを石鯛の頭に当てれば、一瞬であるが石鯛は「脳震盪」起こす。
実際に当てるのではなく、引くことで衝撃を与えると言う、小川流の釣法である。
コンクリートブロック1個では10kg。これならデカバン15kgも夢ではない。
練習に継ぐ練習、特訓を繰り返す。
師の石鯛釣りはカツオの1本釣り(引き合わせで数釣り)と非常に似通った点がある。
石鯛を撒き餌の「ニオイ」で寄せ、集めてから竿を出し、群れの5分の4ほどを釣り上げ、 また撒き餌を繰り返す。
しかし私には師のようにカツオの1本釣りの様な釣りは出来ない。
何故なら、師には海中の様子が見切れるが私には見切れないからだ。
師は 小型、中型、大型と全ての石鯛を獲るが、私には小型と中型ばかりで面白くなかった。
そこで私は数釣りよりもターゲットをデカバン1本へと変更することにした。 デカバンは掛けた瞬間の重量と引きは強烈で、心の中で「よし!やった!」と叫びたくなるが、それは一瞬のうちに夢と化す。
力対力の戦いは人間に分があるが、人と魚を繋いでいる道糸はナイロン。
故にその強烈な引きにより、糸が張り切った状態で根やサンゴ、牡蠣、フジツボ等の障害物に擦れると、まるで何事もなかったの如く一瞬で幕を閉じる。
まして師の言いつけ通り、リールから道糸は出て行かない。
何度も何度も敗戦が続く…
途方に暮れた私は、師に逆らいドラックを緩めて大型グレ釣り、カジキ釣りの要領で行こうと方針を決めた。
これ以上、デカバンに馬鹿にされたくなかったのが本音だ。
そこで私は星型にハンドル(溶接した)を付け、ダブルハンドルとして考案し、ドラックハンドルとして用いた。
現行のドラックハンドルの原型は私が考案したものである。
そして私はこのドラックハンドルを駆使して数多くのデカバンを獲った。
しかし、ドラッグハンドルの操作が困難なために取り逃がしたこともある。
ドラックハンドルの操作がいかに難しいか。考案した私でさえ完璧に操作できない程だ。
今となっては当たり前のようにドラックハンドルが装備されているが、逆にドラッグハンドルが装備されているが故に私のようにチャンスを無駄にした釣り人の無念さは推し量ることが出来ない。
特にドラックハンドルを使用しないビギナーの方には全くもって無用の長物であるとも思う。
しかし、デカバンを仕留めるのに私が結果を出したのは事実。
皆さんにも是非ドラッグハンドルを使いこなしデカバンを獲ってもらいたい。
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